TOHOKUUNIVERSITY Startup Incubation Center

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INTERVIEWインタビュー

株式会社Rurio

Rurio Inc.
株式会社Rurio

Rurio Inc.
[ お問合せ ]
info[@]rurio.jp
※ 送信する際は [@] の [ ]部分 を削除してください
[ ウェブサイト ]
https://rurio.jp//
[ 所在地 ]
宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉468-1 東北大学マテリアル・イノベーション・センター青葉山ガレージ内
INTERVIEW

双葉町から始める地方創生。
コミュニティーを作って
地域の関係人口を増やす

 日本の喫緊の課題である過疎化。本学工学部出身の小林雅幸さんが代表取締役を務める株式会社Rurioは、ツアーや雑誌の発行を通してコミュニティーを作ることで、この課題の解決を図ろうとしている。地方に長期的に関わってくれる人材を増やすにはどうしたらよいのか。まずは福島県双葉町から変化を起こしていく。

「誰も存在しない町」の衝撃。
ただ町に来るのではなく、
継続的に関わってくれる人を

 双葉町と関わるようになったのは偶然だった。小林雅幸代表取締役は学生時代、東日本大震災の被災地を巡るツアーで初めて双葉町を訪れた。「双葉町に行ってみて、『誰も存在しない町』であることが僕にとっては衝撃でした」。当時の双葉町は福島第一原子力発電所の事故の影響で、全町民が避難を強いられていた。「壊れた家がある一方で、国の予算で建てられた新しい建物もある。このままでいいのだろうかと思った」と小林さん。建物などのハードインフラは国の支援で復旧していくかもしれない。では町の人々の生業や、コミュニティーは? 「そういったソフトインフラは、お金でどうにかなるものではない。ここを何とかしなければ、この町はなくなってしまう」。活動の原点ともいえる意識が芽生えた。

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 このときツアーに通訳として携わっていたのが、後に一緒に会社を立ち上げることになるトリシットCOOだった。小林さんはトリシットさんのことを「すごく優秀なのに、通訳しかしていないのがもったいない」と感じていたという。「『何か一緒にやろうよ』ということで活動を始めました」


 双葉町の人々から聞いたのは、「若い人たちに町に来てほしい」という声。人がいなくなってしまった町を元に戻したい。より発展させたい。その担い手となる人材を必要としていた。これを聞いて小林さんは「ただ若者が町に来ればいいということではなくて、双葉町に継続的に関わってくれる人が必要なのではないか」と分析。双葉町を「被災地」としてくくらない、コミュニティーを作ることを目的とした「パレットキャンプ」が生まれた。


 Rurioは当初、学生団体としてスタートした。小林さんは「Rurioは必要に応じて団体になり、会社になった」と話す。仕事の増加に伴い、人を集約させてプロダクトを世界に出していく団体が必要になった。団体として活動していると、契約の際に法人格が必要になり、それならと今年3月に会社を立ち上げた。「みんなが思うようなキラキラした起業ではないです。ただ、それでいいと思っています」。「もともとコミュニティーを作ることに一番力を入れているので、会社を作って儲けてやるという考えでは、誰もついてこないと思う。人が集まってきて、彼らが『こういうことをやりたい』となったときに、ちゃんと応えてあげられる会社。それが目指している会社の形です」


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「双葉町の魅力を発信したい」。
コミュニティー発のバイリンガル雑誌

 パレットキャンプは、双葉町に長期的に関わる人を増やすことを目的としている。参加者は、ヨガや町の探索などの2日間のプログラムを通して、参加者同士や地域の人とのつながりを深めていく。参加の理由は「ヨガが好き」「友だちを作りたい」などさまざま。そこに「被災地」や「復興」といった言葉はない。「そういう層が参加しているのがおもしろい」と小林さん。「被災地や震災という前提知識がない。それでも、ツアー後のアンケートを見ると、そういう人たちが、町の今後をどうしていこう、自分だったらこうしたい、ということを考えるようになっている。この変化がパレットキャンプの強みだと思っています」。パレットキャンプだからこそ、前提知識がないところから生まれる柔軟な発想を引き出すことができるのだろう。実際に、今まで約100人が参加していて、そのうち30人は運営側として現在も双葉町に関わっている。


 バイリンガル地域雑誌「iro」はまさに、パレットキャンプの参加者の声から生まれた。原発事故のイメージによらない、ツアーで出会った町の優しい人々やおもしろいものを発信したい。ジャーナリズムの知見を持つトリシットさんを中心に、双葉町を世界に発信していく雑誌の制作が始まった。小林さんは「パレットキャンプが目指していた、コミュニティーから何かを生み出すことの大きな成功例」と話す。雑誌は2022年4月に創刊し、現在は日本とインドの計38カ所で配布している。


 参加者が多国籍で、さまざまな言語が話せるということもあり、記事は日本語と英語の両方で掲載する。テーマは「コミュニティー」だ。「今存在している浜通り地域の情報はほぼすべて日本語で、英語の記事で取り上げられているのは、原発事故についてです。その偏りを変えるためには、僕たちが英語で書くしかない。その点がバイリンガルであることの強みだと思います」。双葉町に関わる人々、おいしい食べ物、地域の祭り…雑誌には、データだけでは分からない、双葉町の生きた情報があふれている。今後は今まで発信してきた「ソフトインフラ」に加え、「ハードインフラ」、「浜通りと世界」の3つを雑誌の柱に据えて発行していく予定だ。

双葉町で地方創生の好例を作り、最終的には世界展開を目指す

 日本全国で過疎化が進む今、Rurioは双葉町から地方創生に挑もうとしている。「地方の魅力を上げていかないと、若者が地方から離れていってしまう。原発事故の影響で人口ゼロを経験した双葉町から活動することで、日本全体の課題として問題を捉えることができる」と小林さん。避難指示が一部地域で解除されたとはいえ、双葉町の居住人口は現在でも60人ほど。このまま日本の過疎化が進めば、人口の面で「第二の双葉町」が生まれる可能性は大いにある。「双葉町で地方創生の好例を作って、それを日本全国に展開する。最終的には世界に輸出するところまでやりたい」とビジョンを描く。

 現在は雑誌を含めたメディア事業に力を入れる。今年からはオンラインメディアを立ち上げ、英語で発信している強みを生かして世界中に読者を広げていくことで、メディアを通じた地方創生を目指す。地方創生に必要な人材を確保するために、まずは情報を発信して、多くの人に地方に興味を持ってもらうことが狙いだ。情報発信をして終わりではない。Rurioの強みは、そこからツアーなどで実際に現地に人を連れてこられるところにある。今年は雑誌の読者イベントを開催し、読者と双葉町の事業者との交流を企画しているという。

「メディアを拡大して、地域への入り口を広くする。そして最終的に何人かは地域にやってくる仕組みを作りたい。読者イベント等でコミュニティーを作り、地域に本格的に関わってくれる人材を獲得するというところまでを考えています。双葉町でこれを実現できたら、今度は他の地域で活かしていくことも可能ですよね」

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