TOHOKUUNIVERSITY Startup Incubation Center

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INTERVIEWインタビュー

株式会社スーパーナノデザイン

Super Nano Design Co.,Ltd
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株式会社スーパーナノデザイン

Super Nano Design Co.,Ltd
[ お問合せ ]
inquiry[@]super-nano.com
※ 送信する際は [@] の [ ]部分 を削除してください
[ ウェブサイト ]
https://www.super-nano.com/
[ 所在地 ]
仙台市青葉区荒巻字青葉6-6-40東北大学連携ビジネスインキュベータ(T-Biz) 404号室
INTERVIEW

水と油も混ざり合う
「超臨界」が切り拓く、
新たなものづくりの世界

水と油のように、通常では混ざらないものを混ぜることができる「超臨界水熱合成法」で、あらゆる材料のナノ粒子をオーダーメイドで設計するスーパーナノデザイン。無機分子と有機分子を混ぜることも可能で、「セラミックス」と「プラスチック」など異なる二つの特性を持った新たな材料を開発。電子部品の放熱シートとしての活用が進むほか、医薬品や化粧品などあらゆる産業分野で画期的な新材料を生み出せる技術として期待されている。

世界に先駆けて「超臨界」でのものづくりを研究

物質に一定以上の高温・高圧を加えると、気体・液体・固体のいずれでもない「超臨界」の状態になる。超臨界状態にある水では、通常の水では溶けないものも溶かすことが可能だ。この性質を応用して東北大学工学研究科の阿尻雅文教授が発明した「超臨界水熱合成法」では、通常の水では混ざらない物質同士を混ぜ合わせ、新しい材料を生み出すことができる。

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阿尻雅文教授

超臨界研究の第一人者である阿尻教授は「今の産業は、気体・液体・固体を中心に成り立っている。『超臨界』をものづくりに役立て、産業化したいと考えた」と、約30年前から世界に先駆けて超臨界を使ったものづくりを研究。研究が進むにつれ国や企業の関心も高まり、「企業が新技術を導入するのはとても勇気が要ること。その橋渡し役が必要だと感じ始めた」と話す。
東北大学でも「大学発ベンチャー」を育てる機運が高まり、研究の事業化を模索したとき、経営者として思い浮かんだのが旧知の仲だった中田成代表だ。セラミックスの燃焼合成分野で北海道大学発ベンチャーを立ち上げた経験もある中田代表は相談を受け、「非常に興味を持った。世界初の超臨界の技術に惚れましたね」と笑う。阿尻教授がCTOに就任する形で、2018年に研究を事業化した「スーパーナノデザイン」が設立された。

セラミックスとプラスチック、
両方の特性を併せ持つ新素材

同社は超臨界状態で物質を混ぜ合わせる「超臨界水熱合成法」を用いて、あらゆる材料のナノ粒子をオーダーメイドで設計している。セラミックスのような無機材料に有機材料を融合させる「有機修飾」という独自の技術を持ち、さまざまな特性を付加した新しい材料を開発できるのが強みだ。
例えば小型化が進む自動車のエンジンなどの電気デバイスは、パワーが上がるとその分、熱を放出するため、熱をうまく逃すための材料が必要となる。その材料として、金属は熱を伝えやすいが漏電の危険性があり、セラミックスやプラスチックだけでは熱が伝わりにくい。そこで、超臨界でセラミックスやプラスチックを混ぜ合わせれば、漏電の心配がなく熱伝導率は高く、また、密着性や成形加工性もある、双方の特性を併せ持った新たな材料が誕生する。このような放熱のための新素材は今、自動車メーカーや家電メーカー、通信会社などから大きな注目を集めている。

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中田成社長
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超臨界で製造した「熱伝導率の高い絶縁体」のナノ粒子を、シート状に加工。電子デバイスの放熱シートとして活用が進んでいる(同社YouTubeより)

また食品添加物や化粧品に含まれているタルクは天然鉱石から作られるが、金属などの不純物が混入していることがあり、消費者から安全性が問題視されることがあった。同社は超臨界で、化学薬品から人工的にタルクを製造。不純物ゼロで均一な粒子を作ることができ、アレルギーの心配もないことから、鉱物由来のタルクを代替できる新素材として期待されている。

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超臨界で作ったタルク(右)は不純物が含まれず、食品や医薬品の原料として注目されている(同社YouTubeより)

「気づいたら身の回りに超臨界が。そんな世界が夢」

長期的には低炭素社会の実現に向け、工場や発電所から排出される熱を使って水素を作るための触媒の開発や、より効果的なワクチンの製造など、あらゆる分野での活用を見据えた研究が進む。中田代表は「色んなことができ、色んな可能性がある。どれか一つでも大きな事業になれば他もくっついてくるはず。それが何になるのか、今模索しているところです」と話す。そして「超臨界と有機修飾による新材料の開発で、色んな産業に貢献できるのが強み。業態を限らず、日本の産業界に貢献できれば」と未来を描く。

阿尻教授は「気体・液体・固体だけでない、『超臨界』でしかできないものづくりがあることがわかってきた。東北大発の技術がどんどん広がっていき、気付いたら身の回りにあるものに超臨界が使われている、そんな世の中になったらいいなと思います。水素社会の実現や地球環境全体への貢献なども含め、超臨界の技術が広がることが夢ですね」と笑顔で語った。

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