TOHOKUUNIVERSITY Startup Incubation Center

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INTERVIEWインタビュー

株式会社3DC

3DC Inc.
株式会社3DC

3DC Inc.
[ お問合せ ]
こちらからお問い合わせください
[ ウェブサイト ]
https://www.3dc.co.jp/
[ 所在地 ]
宮城県仙台市青葉区片平2-1-1 産学連携先端材料研究開発センター2F
INTERVIEW

スポンジのようなカーボン材料で、
100年使える電池を作る

 「100年使用可能な電池を作る」。現代の技術では到達していないこの段階に、挑んでいる会社がある。株式会社3DCだ。電池の長寿命化に活用が期待される新たなカーボン材料・グラフェンメソスポンジ(GMS)で、100年使える電池の実現、そしてその先にあるサステナブルな社会の実現を目指す。

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原子1個分の壁の厚さが
「柔らかさ」の鍵

 GMSは東北大学材料科学高等研究所の西原洋知教授の研究室で開発したカーボン材料で、ナノレベルのごく小さな穴が無数に開いた物質だ。特徴は、材料を構成する炭素の壁の厚さが薄いこと。従来の材料は厚さが原子2個分や3個分が限界であったが、GMSは原子1個分の厚さを実現した「世界で一番薄い壁でできた物質」(西原教授)。壁の厚さが薄くなることで、スポンジのように柔らかく、伸び縮みする材料が誕生した。


「従来の、壁の厚さが原子2個分や3個分のカーボン材料というのは、硬くてもろいんです。原子1個分の壁の厚さにしたことで、初めて柔らかくなりました。これがGMSのユニークなところですね」と西原教授は話す。さまざまな用途に応用できることが期待されるGMSだが、社会実装するには量産できる体制が不可欠だ。しかし、大学内だけでは量産を叶えることは難しい。そこで考えたのが、起業という選択だ。西原教授は「大学での発明を世の中で役立てようと思ったら、会社を作るというのは重要なことなんですよ」とその意義を強調する。

  西原教授が起業にあたり「一番の重要課題」と考えたのは、「社長を見つけること」。そうした中で出会ったのが、同社のCEOである黒田拓馬氏だった。2022年、二人は株式会社3DCを設立し、GMSの社会実装に乗り出した。西原教授は「前職での実績もあり、ベンチャー企業のノウハウも知っていて、会社の経営のことが分かっている。理想的な経営者と出会うことができました」と、以前に株式会社サムライインキュベートでスタートアップや起業を目指す研究者の支援をしていた黒田CEOに信頼を寄せる。黒田CEOも、西原教授の人柄に引かれるものがあったという。

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「西原先生は、頭の固さがなくて、研究以外のことにも柔軟にチャレンジしていくバイタリティーがある。なおかつ研究者として超一流。そういった遠い未来を見据えて自分の専門領域から飛び出す力というのはスタートアップではとても重要だと思っています」。西原教授いわく「二人とも攻めるタイプ」だそうで、「会社としては守る人も入れて、バランスを取らないと」と話すが、一方でこうも語る。「どんどん攻めていくっていう姿勢は、ベンチャー企業としては重要じゃないですかね」

長寿命の電池で、EVの寿命を超えていく

 GMSにはどのような可能性があるのだろうか。アルカリ電池やリチウムイオン電池など、あらゆる種類の電池には炭素が含まれる。この電池内の炭素をGMSにすることで、電池をより長持ちさせることができるのではないかと期待されているのだ。これにはGMSの、2種類の耐久性の良さが関係している。
 一つ目は、物理的な耐久性の良さだ。柔らかい特性を持つGMSは、つまり、力がかかっても壊れにくい。電池内には蓄電のための物質が多く含まれているが、これらは蓄電の際にわずかに膨らんだり縮んだりしている。この動きによって段々と物質が劣化し、電池の消耗につながっていくのだが、ここにGMSの物理的耐久性の良さが生きてくる形だ。
 二つ目は、化学的な耐久性の良さ。電池内では酸化還元反応が起こっているが、特に炭素は電気を伝える役割を担っているため、炭素自体は酸化しない方が良い。炭素が酸化し、劣化することで、電池の性能が落ちてしまうからだ。従来のカーボン材料は酸化に弱いという欠点があったが、GMSは化学的な劣化にも強いという特長がある。このことで、電池内で起こる酸化還元反応による炭素の劣化を最小限にし、電池の長寿命化につながっていく。

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 同社がまず目指すのは電気自動車(EV)に搭載する電池にGMSを使用することだ。EVと聞くと環境にやさしいイメージもあるが、黒田CEOは一概にそうとは言えないと話す。現在、EV搭載の電池の寿命は10年から15年程度。ガソリン車が中古車市場も含めて4~50年程度使用されているのと比べると、EVの使用可能年数は格段に短い。
「実はEVの方が使用できる年数が短いので、たくさん自動車を製造しなければなりません。特に電池は、環境に大きな負荷をかけて作られています。EV1台で約10トンの二酸化炭素を排出しているのですが、そのうちの半分ほどが、電池を作るときに排出されているのです」。しかし、電池産業のサステナビリティについての世界的な流れはリサイクルが主流。電池の長寿命化はまだ本格的に議論されていないのが現状だ。電池のリサイクルは、電池内に含まれるレアメタルの回収が主だが、多くの材料の中から目的のレアメタルだけを回収し再利用するには、エネルギーのロスも大きい。「それは本当にサステナブルと言えるのか」と黒田CEO。「作ったものをリサイクルするのではなくて、長寿命の電池をずっと使い続ける方が合理的なのではないでしょうか」


 黒田CEOは、「一番重要だと思っているのは、電池がすごく長持ちして、EVの寿命を超えていくこと」だと話す。100年使える電池があるとして、もしEVを買い替えたいと思ったら、電池はそのままにEVの外身だけを変えればよい。そうやって何回も電池を使用して、最終的には家庭用の電池として使っていく。電池が100年役割を果たすことで、そんな未来が訪れるかもしれないのだ。「太陽光発電などエネルギーのインフラとしても使えるけれど、EVとしても使える。どの電池にもGMSが使われている状態というのが、我々の目標ですね」


 西原教授によると、GMSの柔らかさの程度や、構造の変化など、GMSがどのような物質なのかを理解する段階は、大方決着がついているという。さらに今後2~3年で、リチウムイオン電池や燃料電池など、それぞれに適したGMSの構造が明らかになるのではないかと予想している。
 同社は今後、EVの市場が大きい欧米へのビジネスの展開を加速させていきたい考えだ。黒田CEOは、「カーボンニュートラルな社会の実現のためには、電池は絶対必要なものです」と力を込める。「これからの社会に必要なものなのですが、まだまだ技術的に足りないところがたくさんあります。電池の長寿命化を叶えることができるGMSは、問題解決のための鍵になる材料。エネルギーインフラが良くなることは、世界全体の幸福度を高めることにもつながると思っています」。100年使える電池から広がる世界ーー想像してみてほしい。

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