TOHOKUUNIVERSITY Startup Incubation Center

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INTERVIEWインタビュー

サスメド株式会社

SUSMED, Inc.
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サスメド株式会社

SUSMED, Inc.
[ お問合せ ]
support[@]susmed.co.jp
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[ ウェブサイト ]
https://www.susmed.co.jp/
[ 所在地 ]
東京都中央区日本橋本町3-8-5
INTERVIEW

不眠症患者に「アプリ」を処方し、
睡眠薬に頼らない治療を

日本人の多くが悩んでいる「不眠症」。病院では患者に対し睡眠薬を処方することが一般的だが、依存症などの副作用もあり、根本的な治療には結びつきにくい。サスメドは認知行動療法を取り入れた治療用のスマートフォンアプリを開発し、それを病院で「処方」することで、薬に頼りすぎず患者一人ひとりに合わせた不眠症治療ができる社会を目指している。

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▲サスメドの上野太郎代表

医師として直面した、医療現場と睡眠薬の問題

睡眠医療の専門で、医師として睡眠障害を持つ患者を診察してきた上野太郎代表。医療現場で課題として感じたのが、睡眠薬の処方が中心となっている治療のあり方だった。「不眠症の治療は海外では睡眠薬以外から始めると言われていますが、日本ではすぐに睡眠薬を処方する傾向にあります。背景には、現場の医師たちが非常に忙しいことや、専門外の医師が診察する場合も多いことがあります」

睡眠薬には依存症や筋弛緩作用などの副作用があり、厚生労働省も多量の処方を問題視している。有効な治療法として、医師のカウンセリングや睡眠に関する定期的な記録を通じて患者の生活習慣を変化させる「認知行動療法」があるが、専門知識のある医師は限られ、多くの病院では患者一人ひとりに対応する時間が長く取れないのが現状だ。
そこで上野代表が考案したのが、治療用の「アプリ」の開発だった。患者が毎日睡眠に関する記録を付ける機能や、専門医が行う認知行動療法の機能を持つアプリがあれば「現場の先生の負担を減らせるし、患者にとっては睡眠薬を使わずに済む治療法ができると思いました」と、上野代表は話す。起業や経営の経験はなかったが、「社会実装するところまでしっかり実現したい」と2015年にサスメドを設立。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の起業プログラムにも採択され、構想の実現に向け動き始めた。

スマホアプリで、患者の認知や行動を改善

サスメドが開発しているのは、認知行動療法によって不眠症を治療するアプリだ。不眠症が慢性化してしまうのには、患者が日中から「今日も眠れないのでは」という不安を抱えていることなど、患者自身の「認知」や日常の行動が一因となっている。アプリでは、患者が毎日の就寝時間や起床時間、日中の不安事項や一日の過ごし方などを記録。その記録をアプリが分析し、その人に合わせた生活の改善策の提案などをしてくれる。
このアプリを薬のように病院で「処方」できるようになれば、患者自身が日々の生活の中で治療を進められる上、診察時にも医師とアプリ上の記録を共有することで、より的確な治療につながると期待されている。
アプリは「医療機器」として病院への導入を目指しており、現在は東北大学臨床研究推進センターのアドバイスのもと、100人以上への治験を実施している。治験結果から治療への有効性と安全性が確認でき、医療機器としての国の審査に通れば、病院での処方が可能となる。
薬による治療だけでなく、人々の生活習慣や認知を「アプリ」で改善することで治療を進めていく。この治療のアプローチは、不眠症以外にもさまざまな疾病への活用が始まっている。同社は国立がん研究センターと共同で乳がん患者向けの治療用アプリの臨床研究を行なっている他、進行がん患者向けの治療用アプリの開発も開始し、2020年には厚生労働省科学研究プロジェクトに採択された。
2021年からは東北大学大学院医学系研究科・日本腎臓リハビリテーション学会と共同で、慢性腎臓病患者向けの治療用アプリの共同開発も始動。上野代表は「私たちの技術を色んな分野で使っていただき、医療現場の負担を減らしながら、患者の方の治療のプラスになるようなアプリを増やしていきたい」と意気込む。

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▲医療をITで効率化するための多様な事業を展開するサスメド(同社提供資料)

「持続可能な医療」のために、ITで医療を効率化する

社名の「サスメド」は「Sustainable Medicine」の略。持続可能な医療を実現する、というのが同社の掲げる理念だ。治療用アプリ開発の他にも、AIを用いた医療データの分析や、治験の際にブロックチェーン技術でデータ改ざんを防ぎ、データの確認作業にかかっている膨大な人件費を下げるシステムを開発するなど、さまざまな領域で医療を効率化するしくみを生み出そうとしている。
「日本の社会保障費が増大していく中で、今までの水準の医療を提供し続けられるのか、特に若手の先生たちは不安を感じていると思います。そう考えると、医療自体をIT技術などを通じて効率化していく取り組みが非常に重要になってくるのです」と、上野代表はその意義を語る。
2020年からは東北大学が病棟の一部を企業に開放し、医療機器や医療サービスの共同研究開発を実施する「オープン・ベッド・ラボ」にも入居企業として参加。臨床現場から見えてきた医療課題を、AIなどの先端技術を用いて解決していく先進的な取り組みを始めている。
「新型コロナのワクチンがわずか一年ほどで開発されたように、医療は単なるコストではなく、イノベーションの場でもあると思っています。私たちの技術を使って医療の効率化を進めることで、イノベーションへの挑戦ができる。そんな医療のイノベーションが生まれる環境づくりに貢献していきたいですね」

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